講座紹介:歯内療法学講座/歯科用実体顕微鏡と歯科用コーンビームCTを用いた精度の高い診断と治療の提供をめざしています。(水道橋病院 保存科)(同窓会報426号より)

 歯内療法,歯周治療,保存修復の処置を主体とする保存科は,水道橋病院本館および西棟の2階において,各講座の医局員がその専門性に基づいて診療をしています。紹介状の有無に関わらず多くの患者様が来院し,治療計画のスムーズな遂行がなかなか困難となっておりますが,「各指導医による質の高い歯科医療の提供」と「後進の育成による医療提供環境の拡充」をするべく,保存科一同が粉骨砕身の気持ちで日々診療にあたっております。
 その中で当講座が主に担当する歯内療法領域疾患の治療依頼は,近隣の医院からの紹介患者様の多くを占めています。
 その内容は,「複雑な根管形態を有する歯の処置」,「原因不明の症状残存に対する治療依頼」,「難治性の根尖性歯周炎に対する感染根管治療」,「歯根尖切除法などの外科的歯内療法依頼」と多岐にわたり,多くの場合が検査や処置に専門性の高い知識や器材が必要となっています。
 ご依頼いただきました患者様は,症状に応じた検査を行い,正確な診断の元に治療を進めてまいります。当講座では,通常の口腔内検査に加え,歯科用実体顕微鏡や歯科用コーンビームCTを用いた精密な検査を実施しております。これらを使用することで,歯根破折やパーフォレーション,根管内破折器具の状況を詳細に把握し,精度の高い診断が可能となります。
 現在,保存科では合計10台の歯科用実体顕微鏡を有しておりますが,その内7台を歯内療法学講座の医局員が優先して使用させていただける環境のため,ほぼ全ての患者様に精密な歯内療法処置を提供できると自負しております。
 根管治療の開始に際しては,歯質欠損の程度に応じてコンポジットレジンによる隔壁を作製し,ほぼ全ての症例にラバーダム防湿を行っております。従来通りの手用ファイルやNi-Tiロータリーファイルを根管形態に応じて使用し,可及的にその形態を維持した根管形成を行います。歯科用実体顕微鏡を用いて,根管イスムスの拡大や癒合根管の分岐除去により清掃性の向上,根管内破折器具の除去,パーフォレーションの封鎖処置などを行っております。

 通法の根管治療後に経過観察を行っても治癒が認められない場合や,装着されている補綴装置の除去を希望されない場合は,外科的歯内療法を行うことで対応することもあります。多くは歯科用実体顕微鏡を用いた歯根尖切除法の適応となり,「根尖切除後の分岐副根管減少による再感染リスクの低減」,「超音波チップにより形成された逆根管充填窩洞の緊密な封鎖」,「微細な縫合糸による歯肉弁の精密な縫合」が行えるため,侵襲を抑えつつ,従来の術式と比較して予知性を向上させることが可能となっております。
 治療対象歯の状況から適応の可否を適切に診断させていただいたうえで,各種保険適応外器材も使用しております。患者様がより一層高い水準での治療を希望される場合は,ご相談をいただけますと幸いです。
 現在,歯内療法領域疾患の治療依頼で来院される患者様への対応は教授を含む常勤歯科医師6名で行っております。各々がスムーズな診療を心がけてはおりますが,多くの歯科医院で尽力いただいた上で改善が見られない難症例をご紹介いただいていることもあり,治療過程に回数を要するケースもございます。
 また,精密な治療を行うにあたり,1回の治療にある程度のまとまった時間が必要となります。そのため,心苦しくはございますが,担当医による初診までは数カ月間,治療開始後の再診は1カ月間程度お待ちいただいております。なお,医局員数の増減によって,今後,この期間が延びる可能性もございます。また,この混雑状況の改善,治療技術水準の拡充のため,上級医の指導のもとで若手医局員が対応させていただくこともございますので,ご理解,ご協力いただけますと幸甚に存じます。
 ご迷惑おかけいたしますが,多くの先生方やその患者様のお力になれればと,医局員一同精進してまいりますので,何卒よろしくお願い申し上げます。

古澤成博(歯内療法学講座教授)
佐古 亮(歯内療法学講座助教)