講座紹介:老年歯科補綴学講座/食べる機能を治し支える歯科医療をめざしています(水道橋病院 補綴科)(同窓会報428号より)

 平素より補綴科宛に患者さまをご紹介下さり,誠にありがとうございます。
 当講座の歯科医師は,日本補綴歯科学会を始め,日本老年歯科医学会,日本口腔インプラント学会,日本摂食嚥下リハビリテーション学会といった各専門学会に所属しております。日本補綴歯科学会の指導医2名,専門医3名,認定医1名,また日本老年歯科医学会の指導医2名,認定医3名が在籍しており,定期的に講座内での症例検討会や勉強会を実施して研鑽を積んでおります。

治療の特徴と流れ

 当講座は「食べる機能を治し支える」というミッションを掲げ,欠損部へ補綴装置を製作するだけでなく,患者さまの口腔機能を評価して管理し,各患者さまの状況に応じた総合的なサポートを実践しております。患者さまの中には,自覚症状がないものの口腔機能が低下している方も多くいることが明らかになっています。当講座の治療においては,初診時に担当医との医療面接や欠損部の診断に必要な資料の採得を行うのに加えて,口腔衛生状態,口腔乾燥,咀嚼機能,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,嚥下機能といった口腔機能の検査を行い(図1,2),それらの結果をふまえた総合的な診断を基に,患者さまに最適と考えられる治療計画を立案させていただいております。中でも咀嚼機能に関しては,患者さまの主観的な評価に加え,グミゼリーを用いた咀嚼能力検査などの客観的な検査(図1)を行って,治療による機能の変化を数値化して評価しております。
 義歯治療に関しましては,レジン床義歯や金属床義歯に加え,ジルコニア床義歯(図3),BPS(Ivoclar Vivadent 社認定Biofunctional Prosthetic System,生体機能的補綴システム)義歯やコンフォート(シリコーン系軟質リライン)義歯(図4)といった様々な選択肢に対応し,超高齢社会における多様化する患者さまのニーズにお応えできるように努めております。さらに近年発展の著しいデジタルデンティストリーにも対応し,デジタルデンチャーの臨床応用も行っております(図5)。

デジタル技術を生かした学生教育

 当講座ではこれまでの総義歯製作や口腔機能管理に関する臨床実習に加え,近年ではCADを用いた総義歯設計実習を行っております。これまで咬合器上では直接確認することが難しかった咬合接触状態や咬合様式などを,学生自身がソフトを操作しながらコンピュータ上で確認することができるようになり,非常に好評を得ております(図6)。
 講座員一同,力を合わせて臨床,教育に取り組んでおります。今後とも多くの患者様をご紹介いただきますよう,よろしくお願い申し上げます。

竜 正大(老年歯科補綴学講座准教授)
上田貴之(老年歯科補綴学講座教授)