講座紹介:クラウンブリッジ補綴学講座/生体親和性と審美性のLongevityに特化したメタルフリー治療を行っております。(水道橋病院 補綴科)(同窓会報427号より)

治療の特徴と流れ

 平素より補綴科宛に患者さまをご紹介下さり,誠にありがとうございます。
 当講座の歯科医師は,日本補綴歯科学会を始め,日本歯科審美学会,日本接着歯学会,日本口腔インプラント学会といった各専門学会に所属しており,日々の治療に尽力しております。治療の特徴としては,健全歯質の切削量を必要最低限とし,昨今の向上した接着技術を応用する接着ブリッジや,金属アレルギーが疑われる患者様につきましては内科との連携で検査を行い,生体親和性に優れるセラミックを用いたメタルフリー治療を提供させていただいております。治療の流れとしては,初診時に担当医の医療面接と診断に必要な資料の採得をさせていただき,必要に応じて咬合検査や機能検査,咬合器上での模型診断,セファロ分析を含めたエックス線画像検査を行い,診察・検査の結果を踏まえた診断の基,治療を進めさせていただいております。また,定期的に症例検討会を開いて診断・治療方針について情報共有を行い日々の診療に反映するように講座員一同研鑽しております。

デジタルデンティストリーについて

 当講座では,従来,審美歯科学,接着歯学に重きを置いた診療を行ってまいりました。加えまして,昨今ではデジタル歯科の導入を積極的に進めております。デジタルデンティストリー領域においては,口腔内スキャナーやラボスキャナーを導入し,光学印象および院内技工室で常勤の歯科技工士と密に連携を図り,CAD/CAMで製作した補綴装置による治療を積極的に行っております(図1)。特にここ数年ジルコニアの進歩が著しく,一定の強度を確保しつつ,天然歯に近い色調と透光性を有する材料が開発され,さらに同一組成のプリシェードジルコニアを数層積層したマルチレイヤー型ジルコニアディスクが臨床に応用されるようになり,審美領域への適応を検討できるようになってまいりました(図2)。このようなジルコニア単体で製作される補綴装置では,従来,審美性確保のためにジルコニアフレームにポーセレンを焼き付ける構造の補綴装置での前装材料の強度不足によるトラブルの回避につながっております。また,そのような審美性の高いジルコニアフレームの接着ブリッジやパーシャルデンチャーの支台歯への応用などにつきましても,導入を開始しております。水道橋病院では,院内技工室の全面的なバックアップ体制下での対応が可能であり,幅広い選択肢の中から最適なマテリアルを選択した補綴装置の提供を心掛けております。

短期大学との合同臨床教育について

 昨年から開始いたしました本学5年臨床実習学生と東京歯科大学短期大学歯科衛生学科臨床実習生との合同臨床実習は,今年度も継続実施しております。水道橋校舎本館西棟5階には,実際の診療が十分可能な診療台10台を備えたシミュレーション実習室が整備されており,これまでも学部学生の相互実習等に使用してまいりました。この合同実習では,これまで学修課題として取り上げることが困難でありました多職種連携を想定した課題として,支台歯形成実習:学部5年臨床実習生が術者としてファイバーポストを応用したレジン支台築造からブリッジ支台歯形成・平行測定,その後寒天アルジネート連合印象,短大2年生の臨床実習生はその診療補助と対合歯のアルジネート印象採得,そして固定性補綴装置装着を想定した口腔衛生管理指導というカリキュラムとしております。クラウンブリッジ補綴学講座と短期大学双方のインストラクター指導の下,実際の臨床に即した本格的な臨床実習となり,其々の学生から「かなり現実的な実習を楽しくできました」など,好評を得ることができております。この合同実習に関する教育効果について学生アンケート等の調査を行い,結果について日本歯科医学教育学会での発表を行い,近々誌上発表がなされます。今後も,より実際の臨床活動に即した同様の合同臨床実習カリキュラムを増やしてまいる計画です(図3)。

口腔インプラント科との連携強化について

 これまで補綴科ではインプラント上部構造の取り扱いは,最小限となっておりましたが,口腔インプラント科との連携を強化し,インプラント補綴につきましても積極的に取り組み,診療内容の充実と診療効率の向上を図っております。「すでに他院にてインプラント治療が施されている患者さんのインプラント上部構造にトラブルが認められる。」というようなご相談をお受けすることがあります。患者さん自身が,どのようなインプラントシステムが自身のお口の中に使用されているかをご存知でいらっしゃらない場合など,対応に苦慮することが少なくございません。インプラントメーカー各社への協力要請などを含め,口腔インプラント科を中心に院内関連各科とともに対応を強化いたしております。インプラント補綴に関するお困り症例などにつきまして,ご相談くださいますようお願い申し上げます。

関根 秀志(クラウンブリッジ補綴学講座教授)
四ツ谷 護(クラウンブリッジ補綴学講座講師)