講座紹介:歯科麻酔学講座/安全で快適な歯科治療の提供をめざしています。(水道橋病院 リラックス歯科治療外来 & 千葉歯科医療センター リラックス治療外来)(同窓会報425号より)

 日頃から水道橋病院,市川総合病院,および千葉歯科医療センターに患者様をご紹介いただき,誠にありがとうございます。お陰様で,COVID-19拡大の影響下においても,多くの患者様に受診していただいています。今回は,歯科麻酔学講座が担当している業務のうち,「水道橋病院 リラックス歯科治療外来」と「千葉歯科医療センター リラックス治療外来」についてご紹介させていただきます。
 「水道橋病院 リラックス歯科治療外来」と「千葉歯科医療センター リラックス治療外来」では,「安全で快適な歯科治療の提供」を目的として,主として静脈内鎮静法下の歯科治療を実施しています。静脈内鎮静法は
(1)歯科治療に対して強い恐怖心を持ち,時として血管迷走神経反射(かつての脳貧血症状・神経性ショック)を起こしてしまうような歯科恐怖症の患者様
(2)歯科治療器具を口腔内に入れただけで嘔吐反射を催す異常絞扼反射の患者様
(3)高血圧症や心疾患など様々な医科疾患を合併したいわゆる有病者の患者様
(4)知的障害や脳性麻痺,てんかんなどを合併したいわゆる障害者の患者様
(5)口腔外科小手術やインプラント手術を受ける患者様
など様々な患者様に適用されており,自費診療のための静脈内鎮静法でなければ保険請求が可能です。土地柄のせいか,水道橋病院では(1),(2),(5)の患者様の占める割合が多いのに対して,千葉歯科医療センターでは(3),(4),(5)の患者様の占める割合が比較的多くなっています。水道橋病院では年間約4,000~4,500例程度,千葉歯科医療センターでは年間約2,000~2,500例程度の静脈内鎮静法を実施しており,合計で年間6,000~7,000例程度の症例数になっています。全国の歯科大学・歯学部附属病院で行われる静脈内鎮静法の総数は年間で25,000~30,000例程度であることから,東京歯科大学の2施設の症例数はその1/4 ~1/5を占め,圧倒的多数です。これも,同窓の先生方から多くの患者様をご紹介いただいた結果であり,改めて御礼申し上げます。
 静脈内鎮静法を行うと,患者様は不安や恐怖などの精神的な緊張が和らぎ,うとうとした感じとなります。治療中に意識があり,歯科医師とコミュニケーションが取れているにもかかわらず,治療後には治療の内容が思い出せない「健忘効果」が多くの症例で得られます。この点については,ご紹介をいただく同窓の先生方にもぜひご理解いただきたいと思います。静脈内鎮静法は本来は患者様を眠らせる方法ではありません。「意識があったのに思い出せない」状況が作り出される方法です。もちろん一部の患者様で,極度の歯科恐怖症や重度の知的障害など,患者様の意識があると治療に協力が得られないために,やむを得ず意識をなくす「深鎮静」を行うことがありますが,このような場合には,むしろ日帰りの全身麻酔で治療を行うほうが安全な場合もあります。日帰り全身麻酔は,水道橋病院と千葉歯科医療センターを合計すると,年間約400~ 500例実施しています。新しい千葉歯科医療センターでは,すべての全身麻酔を日帰りで行っています。患者様をご紹介いただくにあたって,この点をご理解いただき,患者様にもご説明いただけると幸いです。
 静脈内鎮静法を実施する場合には経口摂取制限等が必要になります。全身麻酔の場合には術前検査も必要になります。したがって,必ずご予約いただいた上での診療となりますので,患者様にその点をご説明いただき,患者様からご予約のご連絡をいただければ,来院された際に担当医が詳しくご説明させていただきます。
 写真1は水道橋病院 リラックス歯科治療外来における,歯科恐怖症の患者様に対する静脈内鎮静法下歯科治療の風景です。写真2と写真3は新しい千葉歯科医療センターと日帰り全身麻酔下歯科治療の風景です。
 同窓の先生方におかれましては,今後とも東京歯科大学の3医療施設に多くの患者様をご紹介いただきますよう,よろしくお願いいたします。