ふるさと自慢:「日本の宝島,天草」/熊本県(同窓会報394号より)

 近年ゆるキャラ「くまモン」で有名になった熊本だが,本稿では小生のふるさとである天草を紹介させていただこうと思う。天草諸島は有明海と東シナ海に面し,北に長崎県島原の普賢岳を望み,南は鹿児島県の長島へフェリーで30分と熊本県の西に位置している。熊本市内からはおよそ90キロ,車で2時間ほどであるが,鉄道は途中の三角半島までしか通っておらず不便な土地柄ではあったが,平成12年に天草エアラインが就航し福岡空港からは空路30分となった。
 四方を海に囲まれた天草ゆえに風光明媚な海岸線は変化に富んでおり,有明海に朝日がのぼり,夕日は東シナ海に沈んでいく。食卓にあがる魚介類も種類が豊富であり,季節ごとの山海の食材は毎日の楽しみとなっている。また時として小生のようなサンデーアングラーにも小さな幸せを恵んでくれる豊饒の海なのである。
 さて,天草といえばキリシタンと南蛮文化であろう。特に天草西海岸は明治40年に与謝野鉄幹夫妻や北原白秋ら5人の紀行文「五足の靴」の題材となったところであるが,山あいの集落から眺望する東シナ海や漁師町にたたずむ教会の風景は現在でも100年前当時を偲ばせてくれる。また我々TDC同窓生にとって北原白秋は校歌を作詞した人物となれば一層感慨深いものがある。
 また,西海岸を訪れた際には是非とも訪れていただきたいのが,寿芳窯(高浜焼)である。17世紀に採掘された「天草陶石」は高品質の白磁原料として有田や瀬戸へと伝えられたが,当時の第六代目庄屋,上田伝五右衛門武弼が肥前より陶工を招き焼き始めたのが元祖である。それらの焼物は遠くはオランダまで輸出され,当時天草西端のひなびた村からこれだけの産業が育っていったのには驚きをも覚える。また,隣接している上田家庄屋屋敷も必見であろう。約千坪の敷地に200年前に建てられた屋敷は与謝野鉄幹夫妻も逗留したものであるが,その庭園は京都,奈良の古寺にも匹敵する文化財であろう。
 温暖な気候,南蛮文化とキリシタンの歴史探訪や新鮮な食材。見どころ,食べどころ数多なる「日本の宝島」天草。ぜひともTDC同窓諸兄においでいただきたいものである。

写真提供:月兎舎
(昭和60年卒 松田 光正)