ふるさと自慢:藤枝トリップ/静岡県 藤枝市(同窓会報421号より)

 藤枝市は,静岡県中部に位置する都市で,静岡県中部では静岡市に次ぎ2番目に人口が多く,現在約14万人が暮らしております。藤枝の名前の由来は諸説あり,後三年の役(1083年~ 1087年)で源義家が奥州へ下る時に,若一王子神社に立ち寄った際,裏山の古い松の木に藤の蔓が絡まり,藤の花が咲き誇っているのを見て「松に花咲く藤枝の 一王子 宮居ゆたかに いく千代をへん」と和歌を詠んだという説や,藤の枝の様に細長い宿場町であるという説があるといわれております。

 藤枝市はサッカーがとても盛んです。蓮華寺池公園近くの静岡県立藤枝東高校は強豪で, 長谷部 誠選手,中山雅史選手など日本代表選手を数多く輩出しております。藤枝市におけるサッカーの歴史は古く,大正時代に旧制志太中学校(第二次世界大戦後の県立藤枝東高校)の校技として採用されたことに始まります。藤枝市立藤枝小学校にはサッカースポーツ少年団発祥の記念碑があります。藤枝市の職員で構成する藤枝市役所サッカー部は全国自治体職員サッカー選手権大会で20回以上の優勝の実績もあります。J.LEAGUEのJ3には藤枝MYFCが属しており,また現在J2に属しているアビスパ福岡はかつて藤枝ブルックスというチーム名で藤枝市を本拠地として活動していました。

 伝統行事としては,3年に一度10月に開催される藤枝大祭りという長唄と地踊りのお祭りが有名です。藤枝市の山沿いは,もともと東海道五十三次の22番目の宿場町である藤枝宿として栄えており,このあたりを治めていた田中城の城下町として,最盛期には旅籠が37軒あり,商業地としても栄えていました。その田中城の鬼門を守る青山八幡宮の大祭に,江戸時代(1860年頃),藤枝宿の屋台が行列に付き従ったのが始まりとされています。現在の藤枝大祭りの特徴は,旧藤枝宿の9町と隣接5町のあわせて14町から,計14台の屋台が惹き出され,各屋台で長唄・三味線・囃子方というフルメンバーによる演奏にあわせ,80人以上もの踊り手がいっせいに地踊りを披露します。質・量ともに,日本一の長唄による地踊りのお祭りといわれています。この長唄で地踊りを披露する形態は,江戸でも盛んだったのですが,明治になって屋台や山車が東京都内から消え,神興担ぎの祭礼形態へと変化し,自然消滅してしまったそうです。次回の開催は令和4年の10月の予定です。YouTubeでも「藤枝大祭り」と検索いただくと過去のお祭りの様子が閲覧できます。ご興味のある方は是非ご覧になってみてください。

 食文化では,「瀬戸の染飯」という強飯(こわいい)が昔からあります。瀬戸とは東海道藤枝宿から西の島田宿へ向かうちょうど中間あたりの地名です。江戸時代中期まで瀬戸には東海道の立場という宿場と宿場の間の休憩場所として設けられた茶店などが設けられていました。この地域では昔から糯米を蒸した強飯を梔子(くちなし)の実で黄色く染めた染飯を晴れの日に食べていました。梔子は消炎・解熱・鎮痛・利尿などの薬効があるとされ, 東海道を行き交う旅人にとって疲労回復の食べ物として評判が良かったそうです。「瀬戸の染飯」は戦国時代くらいから東海道沿いの茶店で売られ始めたとされていて,1553年の紀行文「参詣道中日記」や,1596年~ 1615年の「信長公記」にもその名が記されています。また十返舎一九の「東海道中膝栗毛」にも「焼き物の名にあう瀬戸の名物は さてこそ米も染め付けにして」と紹介されています。当時の染飯は,摺りつぶし小判の形などに薄く延ばして干して乾かし,柏の葉に包んで売られていたようです。染飯の黄色と柏の葉の青,その美しいコントラストに西国行脚の道中の小林一茶は「染飯や 我々しきが 青柏」と一句詠んだともいわれています。現在では,「瀬戸の染飯」は藤枝駅前の「喜久屋」さんで購入できます。現在の「染飯」は梔子で黄色く染めた三角おむすびの強飯となり形が変わってしまいましたが,美味しくいただくことができます。

 近年では,朝ラーメンも有名です。朝ラーメンとは,静岡県旧志太郡(藤枝市,焼津市,島田市)でみられる朝からラーメンを食べる習慣をいい,朝ラーと略されます。静岡県旧志太郡周辺は茶どころで,新茶シーズンとなる4月からは,農家や問屋が日の出前や早朝から仕事をしております。このような茶業者が早朝の仕事を終えてから朝食としてラーメンを食べたのがはじまりといわれております。藤枝市の「マルナカ」(1919年創業)が,早朝営業と朝ラーメンの発祥と言われています。マルナカをはじめとする店は,所在地が志太地域であることから志太系ラーメンとも呼ばれています。志太系ラーメンを提供する店舗の味は, しょうゆ味ベースが多いです。また,マルナカとの違いを求めるラーメン店もあり,こちらは非志太系ラーメンとも呼ばれています。志太系,非志太系ともに,通常の温かいラーメンだけではなく,茹でた麺を水で締め,甘味を加えた冷たいスープで作る冷やしラーメンも提供されています。ちなみに,冷やしラーメンには,山葵と紅生姜が添えられています。地元の人たちは,いつでも温かいラーメンと冷やしラーメンをセットで食べるのが一般的です。

 デザートで有名なのは,「静岡抹茶スイーツファクトリー ななや」の藤枝抹茶を使ったジェラートです。藤枝の山間部は気候風土がお茶に適しており,生産地として全国的にも有名です。運営している丸七製茶(創業1907年)は,静岡県で初めて本格的な抹茶を作ったとされています。ここのお店の一番人気は,世界でいちばん濃いといわれる「藤枝抹茶ジェラート プレミアムNo.7」です。様々なテレビ番組で取り上げられ,話題となり県内外から多くの人が訪れています。恥ずかしながら私も,東京在住の医局の大先輩から教えていただいたひとりです。ここの抹茶ジェラートの特徴は,ほかでは経験できない原料の抹茶の濃さです。最高品質の抹茶を使用しているため,たくさん使っても「えぐみ」が出ないのが特徴です。抹茶の濃さはNo.1 ~No.7までの7段階あり, 市販のリッチタイプの抹茶アイスと同等の濃さがNo.1といわれておりますので,一番人気のNo.7の抹茶の濃さが相当なものであるとご想像いただけるかと思います。是非一度お召し上がりください。

 今回,このふるさと自慢を執筆させていただくことになったとき,ふと思い出した出来事があります。20年程前,東京歯科大学千葉病院で医局員として口腔外科の学生実習を行っていたときのことです。抜歯後の注意を行っていたある学生が,「抜歯した部分を,“舌べら”で触らないでください。」と説明していました。休み時間,その学生に「君は静岡県の出身?」と声をかけると,「はい,そうです。なぜ,わかったのですか。」と大変不思議がっていました。静岡では,舌べろのことを,舌べらという人が多いのです。私も入局1年目に患者さんに同じ説明をして,不思議な顔をされたことがありました。
様々な人と接することで,新しい発見があります。行ったことのない土地であれば,さらにその機会は増えます。今は残念ながら,人と直に接することが難しい時期です。リモートという技術で簡単に遠く離れている人とつながることができる便利な時代であることは実証されましたが…。是非もう暫くしたら,リモートでは感じることが難しい,藤枝の地元の方との会話,雰囲気,料理の味などを感じていただきたいと思います。皆様お待ちしております。

(平成15年卒 村松 恭太郎)