ふるさと自慢:神々が住まうまち伊勢 〜一生に一度はお伊勢参りへ〜/三重県(同窓会報393号より)

 生まれも育ちも「伊勢」の私は,大学進学でこの地を離れるまで自分の住んでいるところが特別な観光地であることに気づいていませんでした。実際,通っていた幼稚園,小学校から徒歩5分程のところに伊勢神宮があり,授業の写生や,放課後の釣りや木登り遊びも神宮内があたりまえでした。この頃の私にとって,伊勢神宮は「近所の大きな公園」程度の認識だったと思います(ちなみに今は釣りも木登りも禁止されています,もしかすると当時も駄目だったような気もしますが)。
今回は,私のにわか知識で皆さんが神宮に興味を持っていただき,来勢するきっかけになれば私としてもとても嬉しいことです。
そもそも伊勢神宮(正式には神ないくうげくう宮)とは,内宮と外宮の2つの正宮を中心にそれぞれの別宮とその周囲に点在する摂社・末社・所管社の125社の総称です。内宮は日本人の総氏神様で皇祖神でもある天照大御神(あまてらすおおみかみ)が,外宮は天照大御神の御饌(みけ)の神,すなわち食事の神様である豊受大御神(とようけのおおみかみ)が祀られています。現在では内宮は天の神様,外宮は生活の守り神として地の神様と表現する方もいます。以前は伊勢志摩観光コースのひとつとして端折って内宮だけを参拝する方が多かったのですが,近年は正式に外宮,内宮の順で参拝する方が増えてきています。
この「ふるさと自慢」の原稿依頼を引き受けた理由に,今年,神宮が第62回式年遷宮の年を迎えているからということがあります。この神事は字のごとく「宮を遷す」すなわち神様のお引越し行事です。20年に1度,左右の御敷地に御社殿を交互に建て替え,その中の御装束・神宝もすべて新しくします。これを神道では「常若(とこわか)」の精神といいます。内宮のはじまりは紀元前4年となっていますから2000年の歴史の中でこの神事は約1300年余り続いていることになります。なぜ20年周期なのか,これについては諸説がありますが,建築様式「唯一神明造」の技法や御神宝を新調する際の匠の技術を次世代に伝承するためではないかと私は考えています。
この遷宮行事については最近になってメディアにも大きく取り上げられていますから御存知の方も多いことと思いますが,実は8年前から始まっています。平成17年の「山口祭」を皮切りにこれまでに約30の祭儀が執り行われています。一般の人も参加可能なものに,新御社殿建造の御用材を搬入する「御木曳(おきひき)」行事や正殿が建つ御敷地に敷きつめる白石を奉献する「御白石持(おしらいしもち)」行事などがあります。今回の式年遷宮ではもう終了していますので,ぜひ20年後の第63回の際には「一日神領民」として参加していただくのも楽しいかと思います。また,クライマックスの「遷御(せんぎょ)」は内宮では10月2日,外宮では同月5日の夜に行われます。
今年中に来勢していただければ,若々しく瑞々しい新御社殿と重厚で威厳のある旧御社殿の両方を左右にみることができると思います。
それから,来年以降ももし神宮を参拝されるのであれば朝早い時間をお勧めします。朝は5時から参拝が可能です。静寂の中,玉砂利を踏みしめる音が響き,どこからともなく届く森の匂い,空気が重く皮膚に纏わり付くようなあの感覚はなんとも表現しがたく,正宮に近づくにつれ徐々に身を清められていくようで自然からエネルギーを頂いているようです。
その他,神宮の周囲には昔の町並みを再現したおはらい町があり,その中央に位置する「おかげ横丁」もなかなかの風情です。かの有名な「赤福」本店もそこにあります。毎月1日だけの限定発売「朔日餅(ついたちもち)」に当たればラッキーです。
それから,伊勢は神宮だけではありません。リアス式海岸に代表される伊勢志摩国立公園の景色,それは素晴らしいものです。伊勢志摩スカイラインや鳥羽のパールロードが有名ですが,私のお気に入りは「横山展望台」のもの,それは絶景です。
あとは,御木本真珠島の見学もお奨めです。海女の素もぐりの実演や,真珠養殖のしくみの説明やデモを行っています。興味深いのは真珠の核入れや取り出しの時の器具がとても歯科の手用切削器具や充填器に似ていることです。私の祖父の話では,ミキモトの創始者である御木本幸吉と地元の歯科医師が共同で開発したとか,一見の価値ありです。
最後は食べ物について,伊勢志摩は食の宝庫です。言わずと知れた松阪牛は隣町,海の幸は伊勢海老に鮑や雲丹,漫画「美味しんぼ」にも登場する佐藤養殖場に代表される無菌牡蠣,実は最近まで下関まで海上輸送して水揚げされていたという噂の安乗(あのり)河豚,と高級食材が目白押しです。ですが,この伊勢の地でしか食せないものに日本初のファーストフード(私が勝手にそう呼んでいます)「伊勢うどん」や鰹のづけのバラ寿司「てこね寿司」などがあり,こちらもお奨めです。
神々が宿る伊勢の地で心清め,美味しいものをいただき,日々の疲れをいやし,生きる元気を持ってお帰りいただけることと思います。
ぜひ,一度伊勢においでくださいませ。

写真提供:月兎舎
(平成4年卒 中西 以穂)