愛知県支部/令和4年度「六校会」第1回合同講演会

 令和4年3月6日(日)東京歯科大学名誉教授・千葉歯科医療センター客員教授,柴原孝彦先生を招聘し,「六校会」主催による記念すべき第1回合同講演会が「口腔粘膜は我々の専門領域-迷っていませんか,この色と形?-」をテーマに愛知県歯科医師会館とWeb 聴講にて開催されました。
 「六校会」とは,愛知県内に居住する旧制六校(東京歯科大学・東京医科歯科大学・日本歯科大学・日本大学歯学部松戸歯学部・大阪歯科大学・九州歯科大学)出身者で構成される,大学の垣根を越えた歯科医学,医療に関する最新の知識習得および交流を目的とした組織です。
 本講演は愛知県歯科医師会の口腔がん検診事業推進の取り組みに合わせて行われ,口腔がん撲滅運動のフロントランナーである柴原先生に,日本の口腔がんの現況,診察時のチェックポイント,DX化の可能性,そして口腔がん検診の有用性評価まで,多岐にわたる最新の口腔がん情報を極めて詳細に解説していただきました。
 司会は九州歯科大学愛知県同窓会会長 山中一男先生に務めていただき,愛知県日本大学歯学部・松戸歯学部同窓会会長 竹内伸彦先生より「六校会」の説明と開会の辞に次き,挨拶では東京歯科大学愛知県同窓会会長 橋本雅範先生より愛知県歯科医師会会長の内堀典保先生に対しての多大なバックアップへのお礼と,合同講演会の実現に向けてご尽力いただいた各校役員の先生方への感謝の意が伝えられました。
 次いでご来賓の愛知県歯科医師会会長 内堀典保先生より,現在の愛知県歯科医師会の口腔がん検診事業の状況,愛知県行政に対する口腔がん検診実施働きかけの経緯などのご報告をいただきました。
 本講演では現在の口腔がん罹患率の上昇の要因などについて述べられ,高齢化とコロナ禍での検診事業の停滞,受診抑制がベースにあること,また舌がんに罹患された女優堀 ちえみさんの例を挙げられ,口腔がんの認知度の低さ,患者教育がほとんどなされていない点,直視・直達が可能で触診できるにもかかわらず,診断が容易ではない点などを提示された上で,多剤服用による症候のマスキングや認知バイアスなどの診断の過信から,病識の再認識向上の必要がある現状は警鐘に値すると述べられました。
 さらに口腔粘膜疾患の診断のAI化,日常臨床のDX化についても言及され,特にイルミスキャンなどの蛍光観察装置を使った粘膜疾患診断の有意性,信頼度の向上により,疾患の悪性度の進行が推測できる状況まで進化していることから,今後の展開に非常に期待が持てるとのことでした。
 最後に,大阪歯科大学愛知県同窓会会長 水野和幸先生より謝辞を,愛知県日本歯科大学校友会田中正雄会長より閉会の辞をいただき,講演会は終了しました。
 現在,日本は超高齢社会を迎え,生物学的寿命と健康寿命の差異が問題となっています。そして国は歯科界に健康寿命の延伸のため,口腔機能を保持することで積極的に介入することを求めています。我々歯科医療者は,様々なマインドを育て教育をし,構造改築をして口腔がんへの対策を推進していかなければならないと,強く思う時間となりました。

(平成2年卒・小関 健司 記)