副会長
浮地文夫
(東京歯科大学同窓会会報 平成26年10月号/第397号より)
日歯広報は,7月15日付(1625号)の1面に「組織存亡の危機打開に向け協議」という非常に衝撃的な見出しで,「未入会者対策の方向性」を確認した日歯の第176回定時代議員会の模様を伝えている。日歯の平成25年度の入会者数は1,100名で,退会・死亡退会・障害退会を合わせると1,115名となり,会員数は減少に転じた。日歯作成の報告書「会員数の将来予測(試算)について」によれば,2060年には会員数は半数以下に減少すると予測されている。また,超高齢化により終身会員が増加することや会員数の減少により,10年以内に単年度収支の赤字転落が見込まれるという。現在,日本には10万2千余名の歯科医師が存在しているが,日本歯科医師会の会員数は6万5千余名であり,組織率は約65%である。毎年2千名以上の歯科医師が誕生しているにも拘らず,会員数の減少が続けば,組織率は早晩50%を切るであろう。公益社団法人日本歯科医師会は,歯科医師という専門家を会員とする,日本で唯一の全国組織である。その組織率が低下した時,日本の歯科医療に対する発言力のみならず社会的信用の低下が起こることは明白である。
東京歯科大学同窓会の現況はどうであろうか。現在,会員数は9,066名であるが,支部加入者は5,669名,63%である。平成25年度の会費納入者は4,503名,前年度分,前々年度分の納入者を合算しても5,256名で,会費収入は9,500万円を切っている。平成27年度の事業計画,予算案の検討が始まっているが,本年度以上の厳しいものになるであろう。これも平成5年卒以後の同窓の支部加入率・会費納入率の低下が大きな要因と言える。さらに重要な事は,大学の医局員や研修医を除いた,勤務医や開業している若い同窓で,支部未加入者は歯科医師会にも未加入の人が多いことである。
明治36年11月に始まった,日本歯科医師会の前身「大日本歯科医会」の初代会長は高山紀斎先生であり,大正8年から昭和21年まで「日本聯合歯科医師会」,「日本歯科医師会」の会長を務められたのは血脇守之助先生である。
両先生は,日本の歯科医師の身分や業務の確立,口腔衛生の普及,学校歯科医制度の実現等に尽力された。まさに,日本歯科医師会を発展・維持してきたのは,我が東京歯科大学の同窓の先輩たちであると言っても過言ではないであろう。
もう,随分と前になるが,ある雑誌でプロフェショナルの定義について読んだことが有る。それによると
(1) 専門的知識・技術を充分持っていること。
(2) 自己研鑽し,常に新知識・技術の取得に努めること。
(3) 自分の専門分野で社会に貢献すること。
(4) 後進を指導し育成すること。
等が記されていた。まさに高山・血脇両先生の成された事が,プロの仕事と言えるだろう。縁あって歯科医師として,今に生きる我々もこれに続きたいものである。
矢﨑執行部は,準会員制度や新進会員制度を立ち上げ,若い同窓の同窓会への参画を促している。これは,まず同窓会本部に所属し,勤務先や帰省先が決定したら,支部にも歯科医師会にも加入して頂こうという考え方である。
また,同窓会創立120周年記念事業の一環として,アカデミア構想を考えている。これは,歯科医師としての専門的知識や技術の取得のみならず,社会人としての一般的素養の涵養,社会保障制度のあり方等の研究を通して,「歯科医である前に人間たれ」の具現化を目指すものであり,国手を目指す方策でもある。
我々は,誇れる歯科大学を卒業することが出来た。卒後も充分な研鑽を積み,真のプロフェショナルを目指す環境も整いつつある。同窓会の支部にも,歯科医師会にも加入し,今こそ,歯科界の未来の為に行動を起こすときであろう。