巻頭言/歯科医師が足りないって本当ですか? 歯科医療提供体制の今後

副会長 山本秀樹
副会長
山本秀樹

(東京歯科大学同窓会会報 令和6年12月号/第438号より)

 会長を仰せつかりました東京地域支部連合会,北多摩支部,S57卒の山本秀樹です。同窓会には澁谷会長の執行部から参与として参加させていただいております。冨山会長の想い「発信力のある同窓会を目指して」を頭の片隅に置きながら,会務運営に多忙な冨山会長を執行部全員で支えていきたいと考えています。特に,日本歯科医師会常務理事の立場から厚生労働省や日本歯科医師会の動向をいち早く同窓会を通じて全国の会員へ周知していくことが,私の職責であると考えています。同窓会の会員の皆様には,今後ともご指導,ご支援をよろしくお願いいたします。
 さて,現在の日本社会は超高齢社会となり世界各国からその動向が注目を集めています。少子高齢化が益々進み,就労世代の大幅な減少と高齢者の増加が見込まれています。既に,日本のGDPは第4位まで下がり,今後も国力の低下は否めません。一方で高齢者の増加により社会保障費は益々増えてきますが,国民負担のこれ以上の増加も望めません。
 日本の歯科医療提供体制にも少しずつ綻びが現れてきています。厚生労働省の医師,歯科医師,薬剤師の概況によれば,歯科医師数は令和2年104,118名(令和2年)から101,919名(令和4年)へと,この2年間に約2,000名の減少となっています。また,既に全国の歯科医療機関数も減少に転じ始めてきました。移動が困難になった在宅高齢者や福祉施設等の要介護者への在宅歯科診療に携わる歯科医療機関も概ね20%とあまり変化がみられません。さらに,厚生労働省の「無医師地区及び無歯科医地区調査の概要」によれば,全国の無歯科医地区は777地区(令和元年)から784地区(令和4年)へと微増となっています。歯科医師の偏在やスペシャルニーズの患者に対応できる専門歯科医師の養成も実情には追いついていません。近い将来,全国各地で歯科医師不足が表面化していくことになるでしょう。現在の日本歯科医師会の会員は64,133名でその平均年齢は63歳となっていますので,今後10数年でリタイアする歯科医師数の大幅な増加と歯科医療機関数の急激な減少が見込まれています。かつて日本経済はバブル崩壊後30年以上低迷し,歯科診療所数はコンビニより多く経営が逼迫しているとの報道が多く見られましたが,今後は歯科医師数も歯科診療所数もこのままでは減少していくとみられています。
 歯科界は明らかに新たなフェーズを迎えたのだろうと思います。歯科界の未来は決して暗くなく,むしろ活躍の場が広がっていきます。若い世代や女性の活躍が今まで以上に期待されていきます。近年,歯学部卒業生の約半数が女性であることから,女性歯科医師には同窓会,歯科医師会,あるいは行政歯科医師の道など様々な役職での活躍が期待されています。
 創立130年を迎える東京歯科大学同窓会会員には,是非とも歯科界の先頭に立ち,その多彩な才能を発揮していただければと願っています。