巻頭言/診療報酬改定を考える
副会長
中西國人
(東京歯科大学同窓会会報 令和6年2月号/第435号より)
昨年11月に開催されました評議員会において次期会長に冨山雅史先生が選任され,本年1月より任期に入りはや半年が過ぎようとしています。
澁谷執行部に引き続き副会長を拝命いたしました。与えられた職務を通して東京歯科大学同窓会の会務運営に少しでも貢献できますよう努力していく所存でございますので,よろしくお願いします。
私が本部同窓会の執行部へ初めて参加いたしましたのは,事業推進部に保険部が残っていた時期でした。前常任理事の前田 修先生(S48年卒)より引き継ぎ冊子の発行や保険部便り等も発信して参りましたが,その頃は保険制度が地方により異なりルールが多岐にわたっておりました。全国展開の本部同窓会の事業としてはそぐわないのではとの意見もあり廃部になってしまいました。そんな思い入れも在り,今回の診療報酬改定について感じたことを述べてまいりたいと思います。
今回の保険改定は,トリプル改定となり診療報酬・介護報酬・障害福祉サービスの3つの報酬改定が重なってしまいました。それが原因で厚生労働省の業務が間に合わないのか4月改定,6月施行という前代未聞の形態の診療報酬改定となりました。また,厚生労働省の中の旧労働省の思惑なのか改定に「歯科医療機関において,勤務する歯科衛生士,歯科技工士等の賃金の改善を実施している場合の評価の新設」と「歯科医療機関の職員や歯科技工所で従事する者の賃上げを実施する等の観点から,初再診料や歯科修復・欠損補綴物の製作に係る項目の評価の引き上げ」の2項目が入っています。この事が今回の診療報酬改定が更に分かりにくいという印象を与えることとなっています。
歯科における「社会医療診療行為別統計」の年次推移を考察してみると,補綴関連の項目は継続的に減少傾向にある一方で歯周治療・訪問診療・医学管理部門等が増加傾向にあります。また,比較的新しく導入されたSPT やエナメル質初期う蝕の管理などの継続管理や行政が推し進めるメタルフリーへの流れからファイバーポストやCAD/CAM 冠の伸びが大きくなってきました。この様な歯科医療の流れが今回の診療報酬改定に反映されています。
他にも医療DXの推進・地域包括システムにおいて重要な構成要素である在宅医療・医科歯科連携に係わる項目などが重点項目として挙げられます。超高齢社会の進行のなかで国民のQOLの改善や健康寿命の延伸に歯科口腔の健康管理が重要な要素であると国民の中でも認識されてきました。
今回の診療報酬改定は,かなり理解して取り組まれた医療機関はプラス改定になりますが気を抜いてしまうと思ったほど伸びない結果になると思われます。我々高齢の歯科医師にとっては,技術的な問題や設備投資の問題などでなかなかついていけない改定内容になっています。そろそろ我々団塊の世代が引退すれば再び歯科医師不足の時代が到来して失墜した歯科医師の地位の向上に繋がるかもしれません。若い会員の皆様に来年創立130周年を迎える同窓会を発展させ,歯科界をリードしていただきたいと期待いたします。