平成31年7月7日13時より第3回静岡県支部学術大会が,レイアップ御幸町ビルにて行われました。今回は5名の先生方にご講演をいただきました。
鈴木 龍先生(磐周地区) 『ケルン国際デンタルショー(IDS)の報告』:「IDSは世界最大のデンタルショーで,今後の歯科の方向性が示唆されるもので,口腔内カメラ,CAD/CAMなどのデジタル系の情報収集のために参加した。特に口腔内カメラは次期改定より保険導入されると噂されている。現在は光学カメラの機能に赤外線が追加された。赤外線の対象は硬組織であり,歯肉,唾液に関係なく縁下マージンを正確に撮影することができる。また,今まではデンタル撮影により齲蝕診査がされてたがこの赤外線機能により被曝することなく診査が可能になるだろう。CAD/CAMでは少しずつシステムがオープンになってきてる。」
青木一充先生(東京都立墨東病院歯科口腔外科) 『骨吸収抑制剤関連顎骨壊死の現状』:「2016年発表のポジションペーパーでは骨吸収抑制製剤関連顎骨壊死(ARONJ)の発生頻度は骨粗鬆症患者で0.09%くらい,がん患者で1~2%くらい。リスク因子としては感染してる歯,口腔衛生不良,不適合義歯,がん,糖尿病,喫煙,ステロイド製剤,免疫抑制剤などがあげられる。治療における注意点はやはり徹底した口腔衛生管理,抜歯すべき歯は早めに抜くこと。休薬については,4年以上骨吸収抑制薬投与を受けている場合は骨折リスクを含めた全身状態が許容すれば2か月前後の休薬を主治医と協議,検討することを提唱しているが,休薬による顎骨壊死の減少は不明(認められない?)。」
坂本豊明先生(東京都立墨東病院) 『歯科治療中に起こりうる全身的偶発症』:「偶発症で圧倒的に多いのは血管迷走神経反射で局所麻酔注入後に多い。その他局所麻酔薬中毒, 過換気症候群, アナフィラキシーショックについての症状や対処法,心肺蘇生では今では気道確保より先に心臓マッサージを行うように指導されている。」
山田雅司先生(東京歯科大学歯内療法学講座) 『現代の歯根端切除術について』:「外科的歯内療法といえば歯根端切除術が一般的であり,以前は成功率は低かったが最近の術式では材料,器材などの発展により成功率は90%を超えるようになった。ただ,重要なことは診査,診断と基本的なコンセプトを重視し,一般的な歯内療法の技術を習得することである。」
松永 智先生(東京歯科大学解剖学講座) 『退化は進化の一環なのか?変わっていく臨床解剖の常識』:「解剖学の根本は以前からほぼ変わらない,確立したものであり,今の学生にも昔と変わらない内容で授業をしている。しかし臨床では少しずつ変化がみられてきている。顎骨は段々小さくなり,未来の人類は「宇宙人グレイ」のように頭が大きくて顎は小さくとがったような形になるだろうといわれている。8番も元々ない人がいるし,最近では6番の位置異常や形態的変化がみられることがある。骨学においても「骨単位」が今では「オステオン」という名称になり, また骨内に感覚神経は通ってないと考えられていたが,今では痛みを感じない程度の感覚神経があり,脳と連関関係にあるという。現に義歯装着者と比較すると脳活性が優位に高いという報告もある。
長期にわたって機能してるインプラント周囲の顎骨においても圧受容器に似た感覚系ができてくるというシステマティックレビューが出され,末梢系のフィードバック経路を回復することができるようになるかもしれないと今は考えられている。」
講師の先生方には大変興味深い,そして日々の臨床にとても役に立つ知識をご講演いただきました。ありがとうございました。
(平成13年卒・片岡 洋平 記)