7月9日(日)に愛知県歯科医師会館にて東京歯科大学愛知県同窓会の平成29年度の学術講演会が行なわれました。演題は「歯科臨床のための機能解剖学」で講師は東京歯科大学解剖学講座主任教授の阿部伸一先生です。
ご講演の前半部分では歯科臨床のために知っておきたい機能解剖学の知識として,有歯顎の歯槽部を含んだ顎骨内の構造と歯を喪失した顎堤部分の顎骨内の構造の相違と,インプラント埋入後の顎骨内の構造の変化についてお話戴きました。続いて総義歯作成のために知っておきたい解剖学として,解剖学的見地からの義歯床縁の設定の根拠について説明して戴きました。さらに口腔内小手術,インプラント治療のために知っておきたい解剖学として,口腔内小手術,特に第三大臼歯(水平埋伏歯)の抜歯やインプラント手術に際して注意を要する神経として,最後臼歯の舌側の奥に位置する舌神経に注意を払う事,加えてインプラント手術に際しての下歯槽神経の損傷や,インプラントによる下歯槽神経への近接・圧迫での下口唇麻痺にも注意が必要で,臨床的に下歯槽神経までの距離に余裕をもたせることが大切で在る事や,オトガイ孔より出た神経は麻痺が出やすく,切歯孔から出た神経,切歯枝は麻痺が出ないなど部位により差異がある事などを解説して戴きました。
講演の後半は,口腔機能の健全な発達とそのメカニズムについてコスメティック的な要素も含め解説して戴きました。さらに口腔機能の知識の延長にある「総義歯作成の勘所及び関連する高齢者の咀嚼・嚥下機能」に関し,解剖学的側面からお話を戴きました。姿勢と頭の位置と首の骨(環椎,軸椎)の関係や,口の周りの筋肉の運動や顎関節の動きについて,エックス線テレビを使用した嚥下の動態などを詳しく具体的に説明して戴きました。
続いて行なわれた質疑応答では,出席された若手の同窓会員をはじめ,他校の先生方からの質問も多数あり,臨床の疑問に解剖学の面から懇切丁寧にお答えを戴きました。その後,場所を変えての懇親会では,最年長で参加して戴きました橋本京一先生に,ご挨拶と乾杯のご発声をお願いしました。挨拶の中で,御年94歳になられ,お孫さんがお二人東京歯科大学をご卒業になり,めでたく国家試験を合格して歯科医師に成られた事や,ご自身の健康についてお話されました。年を重ねることは素晴らしい事であるということを実現されている橋本先生には後輩一同尊敬の念にたえません。これからもご自身が目標とされている100歳までご活躍して戴きたいと思っています。懇親会では阿部教授の同級生の同窓の先生も駆けつけて下さり,ご友人共にリラックスされて旧交を温め,歓談されていました。阿部教授の益々のご活躍を期待しております。
(昭和57年卒・久野 昌士 記)