平成26年度「新進会員のつどい」講演紹介:
『エクソソームを用いた診断法の開発に向けて』[吉田 光孝 先生(平成22年卒)]

エクソソームを用いた診断法の開発に向けて

吉田 光孝(平成22年卒)

新進会員のつどい(平成26年11月30日)『エクソソームを用いた診断法の開発に向けて』 吉田 光孝 先生(平成22年卒)

 近年、いろいろな疾患の分子レベルでの発症機構の理解が進み、その知識をベースとした効率的な治療法が次々と開発されている。同時に、より正確な診断を、迅速、非侵襲的な方法で実現するシステムの開発が望まれている。非侵襲性を考えた場合、唾液や血液といった「体液」が理想的な検体であり、体液を解析する事で、間接的に疾患部の診断をおこなう「リキッドバイオプシー(液体生検)」が注目を集めている。体液中には多くのバイオマーカーが含まれている事が知られているが、近年、これらの多くが、「エクソソーム」と呼ばれる粒子に運ばれている事が明らかとなってきた。エクソソームとは、細胞から放出される直径100nm程の小胞で、あらゆる体液に存在する。エクソソームは、放出した親細胞由来の遺伝情報を他の細胞へと伝達する、細胞間のコミュニケーションツールとして機能しており、神経疾患、がん、免疫疾患などと関連している。体液中のエクソソームを、その親細胞に関連させてサブクラスに分類できれば、得られる情報量は飛躍的に増大する事が期待される。われわれは、がん細胞から体液中に放出されたエクソソームを他のエクソソームサブクラスから分離する方法の確立に取り組んでいる。具体的には、がん細胞に特徴的な細胞膜タンパク質に焦点をあて、これを発現するエクソソームを選別できるシステムの構築を試みている。このようなエクソソームのクラス分け(差分化)は、将来的には、診断のみならず、エクソソームを用いた新しい治療法の確立へとつながると考えられる。


平成26年度「新進会員のつどい」特設ページはこちら >>