巻頭言/日本歯科医学会の役割

江里口彰会計担当常任理事
会計担当常任理事
江里口 彰

(東京歯科大学同窓会会報 平成21年8月号/第371号より)

 日本の歯科医学を基礎から支えている学会を纏めているのが日本歯科医学会(以下,日歯学会という。)です。その歴史は古く,日本歯科医師会が戦後の混沌とした歯科界に少しでも学術的な支援が出来ないかということで,昭和23年に日歯学会の前身である日本歯科医師会学術会議を創設したことから始まります。ちなみに現在4年毎に行われ21回を数える日本歯科医学会総会も,第一回は昭和24年11月に日本歯科医師会学術会議総合学会として開催されております。そして日歯学会が常置されて,その運営を開始したのは昭和35年であって,歯科基礎医学会,日本歯科保存学会,日本補綴歯科学会,日本口腔外科学会,日本歯科材料器械学会,日本矯正歯科学会および日本口腔衛生学会の7専門分科会をもって組織されました。現在約73の歯科関連の学会が存在しますが,日歯学会には専門分科会21,認定分科会16が所属しており,会員数は日本歯科医師会会員65,360名,専門・認定分科会会員28,195名を合せて合計93,555名(平成20年11月30日現在)の大きな組織となっています。

 日歯学会の目的は「歯科医学の発展を図って,歯科医療の向上を目指す」と定められております。この設立の精神を現実のものとすべく,日歯学会では,昨今の歯科医療界を取り巻く極めて困難な状況を的確に捉え,日本歯科医師会との連携を緊密に取りつつ,「歯科医療への学術的根拠の提供体制の構築」や「研究成果の迅速な臨床現場への普及体制の構築」並びに「近未来へ向けての歯科医療ビジョンの構築」などを大きな柱として,会務の運営を推進しています。

 さて,同窓の先生方は分科会の会員となり研究活動には積極的に参加されていると思われますが,この日歯学会の役割についてどの程度理解しているのでしょうか。診療報酬改定に向けた学術的根拠の提供,各都道府県歯科医師会と共催した学術講演会の開催,年1回手元に届く日本歯科医学会誌の発行とか,昨年横浜で行われた日本歯科医学会総会の開催など,多くの先生方はこの程度しか浮かばないのではないでしょうか。

 ここでは日歯学会が行っている事業の中で,特に先生方にとって身近に関係するもの1,2を簡単に紹介します。

 歯科診療ガイドラインライブラリーのWEB上での設立です。これは各分科会が独自に作成している診療ガイドラインが,歯科診療の現場で広く活用されるよう,日本歯科医学会が一元管理をして,医療情報サービスMindsへの掲載支援や,先生方への診療ガイドライン の提供を容易にすることを目的としています。

 2つ目はプロジェクト研究。平成19年度から実施しており,研究テーマは各分科会と各県歯科医師会から公募する形式を採り,原則として診療報酬改定における新規医療技術の保険導入,既存技術の再評価に資するものとしています。3テーマを選択して研究資金を分配し, 研究期間は最大2年,幅の広い研究結果を得るために専門以外の学会にも参加を呼びかけています。

 このように日歯学会では,現在同窓会本部が進めている機構改革と同様,機能を充実しながら合理的・効率的に,しかも会員の目に見える事業展開を進めています。先生方におかれましては,日歯学会会員は分科会だけでなく日本歯科医師会の会員全てがその資格を有することを再認識され,歯科医師会および分科会を通して日歯学会に対する種々の意見,要望等を積極的に寄せることにより,歯科医学の発展にご自身として参加していただきたいと思います。