巻頭言/「変革と発展」への思考

片倉恵男副会長
副会長
片倉 恵男

(東京歯科大学同窓会会報 平成20年12月号/第367号より)

 東京歯科大学は再来年創立120周年を迎えるに当り、メインテーマに「継承と発展」を掲げましたが、これは本学が歯科界のリーダーとして養ってきた伝統を後世に継承し、今後も更なる歯科医学界の発展へと導いていくことを意味するとのことです。

 一方本年1月に発足した東京歯科大学同窓会の大山執行部は、「変革と発展」を目指し和衷協同を以って会務に全力を尽くすことを目標に掲げました。

 私は数年前に上原春男著「成長するものだけが生き残る」(サンマーク出版)を読んだことを思い出します。この著者は工学博士の立場で個人と組織とを問わず「成長は人間にとって不可欠」であることを、説得力ある論法によって分かり易く解説しております。

 母校は「キャンパスの水道橋移転」を決定し、大学当局はその理由を同窓はじめ各方面に伝えるべく懸命の努力をしておりますが、それはまさに「生き残るために成長する」道を選択したものと私は理解しております。

 移転については賛否両論があり、反対者の中には多くの同窓に書簡を送り自説を訴える人もあり、各地の同窓会支部においても移転に疑問を持つ人や反対を唱える人が少なからず居ることも確かです。そしてこれらの人々は全て母校を愛し、母校に思いを馳せる人達であることは間違いありません。しかし、大学の説明を待つまでもなく、益々進む少子化や歯科大学・歯科医療界の現状を分析し、将来を展望した時私は「移転=成長」と判断するのが妥当であり、その他の事情をも考慮すれば移転やむなしと考える1人です。(但しサブプライム問題から派生した世界的金融・経済異変が、本事業に与える影響は非常に懸念されるところです)

 我々は医療人であるが故に日常臨床においては「万一の場合の備え」は必須であると共に“歯科医師である前に人間たれ”という血脇イズムは、東歯同窓の多くが胸に刻んでいる筈です。即ち人間性豊かな医療人であれば“琴柱ことじにかわしてしつす”(史記)の教訓を胸に収め、常に臨機応変の対応が出来なければならないと思います。昨年発生した同窓会に関わる「一連の出来事」では、この訓えをしみじみと感じたものでした。

 大山執行部は、会員のために如何にあるべきか、会員の浄財を如何に使うべきかを熟慮して、会務執行に努めておりますが、そのため7月に「会則等検討委員会」を設立致しました。会則の適正・合理化と共に、旅費規程を改正して経費の削減を計るべく数項目について諮問し、答申を受けて先月の評議員会・総会で可決・承認を頂きました。

 本年は多くの問題を抱える中での評議員会・総会の開催となりましたが、活発な意見・質疑が交わされながらも「東京歯科大学らしい」爽やかで感動・感銘を覚える閉幕となったことが実に印象的でした。

 次年度予算編成に当っては、経費の有効活用と事業の活性化を計るために「事業計画検討会」を発足させました。どのような変革が真の発展に繋がるかを思考しつつ、「会員のために」を第一義として、会員が信頼を寄せ魅力を感じる同窓会たるべく、役員一同今後一層奮励しなければならないと思います。

 母校が熱田理事長による新体制のもと、多難な時局を乗り越えなければならない今こそ、大学・同窓一丸となり“俯仰ふぎょう天地てんちじず”(孟子)を肝に銘じ、歯科界のオピニオンリーダーを自負すると共に、「東京歯科大学の底力」を発揮し、輝かしい120周年を迎えようではありませんか。