副会長
江崎 梅太郎
(東京歯科大学同窓会会報 平成20年4月号/第363号より)
大学卒業後、すこぶる健康で、体調不良で診療を休むことはなかった。他人からは“元気ですネ”“丈夫でいいネ。”と云われ、自分自身も長生きし、あわよくば高齢診療のギネス記録を……。と考えたこともあった。もっとも体調にはそれなりに気をつけて、厄年には酒を飲むより不真面目にも人間ドックに入院したり、体調不良のときはかかりつけドクターに診療してもらう…と、まあまあの健康管理はしたつもりであった。
古稀に近づいた頃、診療時になにか少し体に違和感を覚えるようになった。各種診療器材のスイッチ操作が微妙にズレているような感覚である。疲れて集中力が切れたかなあと思っていたがどうも違う。だんだんとズレる感覚の回数が増えてきた。もっともスイッチ操作のズレが1秒も違うわけではなく、多分1/100秒くらいだと思われるが……、ズレてると云う感覚は確実にあって、いつのまにか、“老い”が私にも来たわけである。
このズレは、口腔内で切削器具を操作しているときが最も怖いわけで、一歩誤ればすぐ慰謝料、賠償……となる今日此頃である。
70代になって、いろいろ患ったが、老化のための感覚のズレは不治の病と判断し、75才の誕生日をもって休院とした。
長々と自分の事を書き過ぎたようです。
さて、母校は創立120周年に向かおうとしています。同窓会もそれに近いのではないでしょうか。
私が気になるのは”同窓会の老化”はないだろうかと云うことであります。
いやー、そんなことはない。新組織が決まるときは若い会員が役員になるのでしょう。支部長も若くなるのでしょう。会員だって若い会員が入会してきます。老化なんて考えられません。と云われる方は多い。
わが同窓会は長い歴史をもち、誇り高い今があります。これは多くの先輩と今の会員がつくったものです。人がつくった歴史には陽の部分と陰の部分があると思います。陽の部分は会員の前に堂々と披露されるが、陰の部分は、ポケットの底のホコリのように隠されているのではないでしょうか。私自身、数年理事会の末席をけがしているが、未だその陰の部分は少しもわからない。しかし、神でない人間の築いた歴史の中にはやはり、陰の部分はあるだろうと推論しています。
会員の皆様には多大の迷惑と心配をお掛けした2007年の事件は、積み重なった陰の部分が惹き起こしたものだと感じております。そして、当時の理事の一人として、お詫び申し上げたいと思います。
もし、陰の部分に影響されるとしたら、それは同窓会の老化と云えるのではないでしょうか。
大山会長が組織された新役員会では、皆がオープンな発言をし、その中で良い意見をまとめようとの空気が感じられます。(役員会がチョット長くなるのが玉にキズですが…。)
この空気が続けば、やがて、同窓会は、役員が知っていることはすべて会員が知り、会員の出来事はすべて役員が知ることになるだろうと思います。
そして、陰の部分が次第に少なくなり、やがてなくなってゆくでしょう。
人は老いることが宿命でしょう。しかし、同窓会は若くなることが宿命だと思います。そして、若さとは年齢や卒業年度とは関係ないでしょう。同窓会の今と未来へ若さを注入して進みたいものです。
会員の皆様の実行力を期待しております。