モンゴル紀行-衆議院日本・モンゴル友好議員連盟に同行して(第410号より)

髙市 真之(平成16年卒)

 日本人の多くが「モンゴル」という地名を聞けば,「緑の大草原」,「遊牧の民」を思い起こすのではないだろうか。近年,大相撲では多くのモンゴル出身力士が活躍しており,様々な分野で交流が盛んになっている。2016年6月7日,日本・モンゴル経済連携協定(EPA)が発効され,両国の経済協力が一層強まってきた。そこで,私は,2017年9月6日~9日,林 幹雄衆議院議員が会長を務める衆議院日本・モンゴル友好議員連盟に参加する機会を得て,モンゴルを訪問した。

草原に生きる

 長年,モンゴルの人々は,厳しい自然環境の中で,季節ごとに家畜と移動する遊牧生活を続けてきた。彼らはゲルと呼ばれる移動式住居に住んでいる。ゲルは木とフェルトででき,分解,組み立てが簡単で,草原に暮らす遊牧民には最適な住居である。遊牧民は縦横無尽に好きなように草原を移動しているイメージがあるが,実はそうではない。遊牧の行動範囲は大まかに決まっており,家畜にとって最良の牧草を食べさせるために移動し,食べ尽くさないようにまた移動する。自然と共存する知恵を受け継ぎ,次世代へ伝えている。しかし,近年,若者たちは都市部で働き,老年の夫婦だけが遊牧を続けている。実際,モンゴルの全人口約300万人の内,約半数の130万人以上がウランバートルに集中している。

祖国の英雄・チンギス・ハーン

 チンギス・ハーンに関する詳述は歴史書に譲るとして,モンゴル国内の要所には,必ずと言っていいほど,チンギス・ハーンに関する絵画や像が展示してあった。1990年の民主化以降,民族の誇りチンギス・ハーンは,モンゴル人のアイデンティティを取り戻すために必要な存在であったようだ。

現在のモンゴル

モンゴルの主な産業は鉱物資源であり,2013年まで高い経済成長を続けたが,世界的な資源安によりモンゴル経済は低迷し,2017年に国際通貨基金(IMF)の対モンゴル支援を受け入れた。1990年以降,民主化が進み,急速な経済成長は貧富の差を生み,現在も混乱の中にあった。昼間の交通渋滞はこの国の常となり,富裕層も確実に増えている。それとは対照的に,ふと思い返す情景は草原で出会った遊牧民の素朴な笑顔と,どこまでも広がる草原であった。より多くの人がこの国の魅力に触れ,新たな発見と喜びを感じ,両国の懸け橋となることを望んでやまない。