専務理事
関 泰忠
(東京歯科大学同窓会会報 平成21年4月号/第369号より)
同窓の皆さまには平素から東京歯科大学本部同窓会の活動のご理解,ご協力とご支援を賜り,心から感謝申し上げます。
米国発の世界的不況,加えて混沌とした政情等,不安定な世情の中で,景気の好転の兆しも見えぬまま,未曾有の経済情勢の大波は,日々厳しさを増しております。
〈同窓会の現況〉
このような時,荒海に乗り出した大山丸も早や一年経過しました。クルーは一丸となって難局を乗り切ろうと努力しております。昨年の評議員会総会では,皆さまから多くの建設的なご意見をいただきました。いま執行部はそれらの課題に真摯に取り組んでおります。
しかし昨今は,若い先生方の同窓会離れ,歯科医師会への未入会,さらに,ここ数年前から浮上した母校の水道橋移転問題に端を発した,大学と同窓会本部への意見書,資金基盤の問題,同窓への援助要請等,多くの情報が錯綜し,気の重い課題が山積しております。
〈同窓会を見直そう〉
そこで,「同窓会はいかにあるべきか」を考えてみたいと思います。今は亡き大先輩は,「同窓会と云うのは,仲好し会なんだから,その辺をよくわきまえて活動しなきゃいけないよ!」とよく言っておられました。その言葉を額面どおりに受け止めればそれまでですが,その裏にはもっと深い意味があります。それは,真の「仲好し」とは,どうあるべきか,ということです。今,とくに若い世代の後輩に,真の仲好し会を理解していただくことが,同窓会組織について悩み,望んでいる問題に適切かつ明確な示唆を与えることとなり,これこそが,今,同窓会執行部に与えられ大きな使命だと考えております。
〈大学と同窓会との連携強化〉
つい最近のニュースです。国は,国家試験の合格率の低い歯学部を定員削減か閉鎖し,さらに卒業までに実技試験を義務化させる方針のようです。このような国の考え方に対応するには,大学と共に同窓会としての将来展望を確立すること,さらには,将来を担う後輩の育成に大きく携わっていくことが,われわれ先達に課せられた義務ではないでしょうか。ご存知のように,最近の国家試験の難しさは想像以上で,大学は多くの優秀な学生を卒業させ,国家試験に合格させることを最大の課題としているといっても過言ではないでしょう。卒業後のスキルアップまで眼を向けていられないのが現実です。大学は同窓が子弟の育成を母校に委ねられる,魅力のあるキャンパスを構築し,卒後も母校に誇りを抱くことにより,社会人として社会に寄与,貢献する多くの同窓が羽ばたく礎となることが,大学の存在価値といえるのではないでしょうか。
昨今,大学を卒業し,晴れて歯科医師になった臨床研修医は,歯科医学の知識は豊富でしょうが,臨床における技術や情報の適切な伝達,人との和を作り出すコミュニケーション行為については,まだまだ未熟だと思います。今までの本学の魅力は,臨床の場で強い力量を身につけた歯科医師を数多く輩出してきたことではないでしょうか。同窓会は今ここに,後輩である研修医の技量向上に協力できる環境つくりに創意工夫する必要があります。従来の「仲好し会」主体から脱却し,大学と一体となって,新しい「同窓会体制」を整えないといけません。今,私どもは,先輩が永年にわたり培ってきた伝統と技量を後輩に伝授する責任があると考えます。
〈同窓会の縦の連携強化〉
また,従来の同窓会は,都道府県の同窓会や歯科医師会等の役職者と連携を密にとるという横の連携を主体にしてきました。縦の連携といえる若い世代との交流は,ややもするとなおざりになっていたのではないかと反省しております。同窓会は,まさに本学血脇イズムの根幹である「医はこれ済生,ひとへに仁」の心を持った人を育てる環境整備に傾注していきたいと考えます。
同窓の皆さまのご協力,ご支援をお願い申し上げます。