巻頭言/叡智と努力と

柳清二副会長
副会長
柳  清二

(東京歯科大学同窓会会報 平成20年10月号/第366号より)

 我が国に近代医学が導入され、めざましい進歩発展とともに、日進月歩の歯科教育が実施されています。

 日本の人口は1997年1億2615万人、2007年1億2778万人で、出生数をみると、10年前は1年間に121万人、現在109万人です。毎日2,986人が出生し、2,992人が死亡されており、2050年には日本の総人口が9,515万人と予測されています。

 2008年度の大学志望者数は543,385人で、言を歯学部に移してみると、志望者減少が止まらず、受験者の減少、即ち歯学部離れの動きが加速しています。私立大学17歯学部での平成19年度入試結果によると、募集人員1,937名、志願者10,630名、受験者9,505名、入学者1,919名で、国立大学歯学部に於いても志願者の減少があると言われています。

 高度先端技術を有し、研究、実績等、優秀な人材を輩出している我々の東京歯科大学へ入学されている学生数は、同窓生子弟の学生205名を含め、816名が将来有望な歯科医として、また学者として勉学に励んでいます。

 東京歯科大学平成20年度入学学生の推薦入試、一般入試受検者数を検索すると、東京都・千葉県・神奈川県・埼玉県から多数受験されています。

 地方から東京の大学へ進学する事について、自宅からの通学等を考えたとき、同窓の先生方の子弟が近隣の歯科大学を受験する傾向にある事は、本校への受検者減少に影響していると思われます。

 東京歯科大学も千葉の校舎を水道橋に移転する事が計画されています。嘗て、水道橋から千葉への校舎移転で、同窓会に於いても賛否両論があった如く、前述した日本の人口動態、私大助成、文化の中心、等々近未来を予測し、移転止む無し論の方もおります。

 又、水道橋を学舎として卒業された方はノスタルジアがありましょう。千葉稲毛校舎で学問を受けた先生方には、校舎の売却にもったいない論があろうと思います。

 今後、千葉校舎のメインテナンス費用や土地売却の費用はどれくらいなのか、色々な事情を心配し、問われる同窓も数多くいらっしゃいます。同窓会本部にはプライベートな情報やプライベートレターも頂いておりますが、今後学長と大山会長との数回に渡る懇談や大学と同窓会で意見交換し、「同窓会として協力できる事は何か」を大きな課題としてしっかり検討しなければならないと思っています。

 東京歯科大学に学び育てられた歯科医として、やはり生涯学習を実施できる大学との情報共有が必要でありましょう。

 本校は黎明期より家族主義を貫いてきました。即ち、先輩を尊び後輩を慈しむ、この精神は愛であり喜びであると思います。

 著者 森岡まさ子氏「森岡ママは今日も笑顔で丘の上」(講談社201ページ)に
「よろこべば、よろこびごとがよろこんで、よろこびをつれ、よろこびにくる」
という言葉があります。今、同窓会本部が大学に対する思いではないでしょうか。

 大学創立120周年記念式典、並びに水道橋校舎の有効活用計画はまさに21世紀のビッグプロジェクトとして、同窓会員の叡智と情熱と弛まぬ努力、そして協力を誓い合い、その時代の所持について検討し、道聴塗説する事無く真摯に考え、大先輩の御意見を頂き、そして若き矜持ある同窓も端緒を開いて互いに理解される様に、寝食忘れて惜しまぬ努力こそ同窓会本部に与えられた試練であり役割であると考えています。