静岡県支部/令和3年学術講演会報告

 コロナ禍の中,Zoom ウェビナーを用いた学術講演会が学術担当理事の鈴木 龍先生の企画により3/27・4/24・5/22・6/26・7/24の計5回,土曜日の19時より各回ともに開会の辞の後,鳥居一也県支部長(S58年卒)の挨拶を頂き開催致しました。
 第1回目は「一般臨床で歯科医師と歯科衛生士が見つける軟組織疾患」講師は山根名誉教授。第2回目は「一般診療におけるこれからの高齢者歯科治療」講師は上田主任教授(老年歯科補綴学講座)。第3回目と第4回目は「これからのデジタル歯科とファブラボ(1)と(2)」について。(1)が3社合同(株式会社モリタ・3ShapeJapan・朝日レントゲン工業株式会社)によるメーカープレゼン,(2)は講師として医療法人社団八龍会すずき歯科医院院長の鈴木 龍先生と勤務医の辻先生。第5回目は「歯科臨床のための機能解剖学」講師が阿部主任教授(解剖学講座)にて行われました。
 すべての講演を視聴し,日々の診療時に歯や歯肉だけではなく口腔粘膜も常に観察することで「何か変」だと気付く重要性や,高齢化と共に認知症患者も増加している中での歯科における治療計画(ゴール)の設定の難しさ,また口腔内スキャンのアナログからデジタルへの変化についてと,デジタルを用いた印象採得から補綴物完成までの一連の流れ,そして最後に解剖の基本である神経の走行や欠損後の顎骨の変化など臨床に役立つ充実した内容でありました。

(平成13年卒・寺田 洋平 記)

 一連のZoomウェビナーによる学術講演会を終えて,今回企画担当をされた学術担当理事である鈴木 龍先生にも下記の総括を寄せていただきました。

“新型コロナ禍におけるWebを使った新しい学会の在り方は,今まで見えてこなかった新しい面を見せてくれました。総会や懇親会は実際に会ってコミュニケーションをとることに価値があると思います。しかし,学術的な観点からはWebの良さを強く感じています。人の頭でスライドが見えなかったり,スライドが遠く細かな部分が分からなかったりして講演の魅力が半減したこともありました。満員の狭い会場では空気が悪かったりと,色々な経験が皆様にもあると思います。そうした欠点をWeb は改善してくれました。また会場への移動時間やコストも非常に大きな負担でした。さらに最近ではYouTubeでの配信が行われ,好きな時間に好きなだけ見ることができます。また会場費などの費用もなくなり,費用負担も軽減されます。これからの学術はWeb中心になると思います。
 私は今までの臨床で経験した中で,学術の大切さを感じていました。そして皆様にお伝えしたいと思いました。臨床での問題を解決する糸口は基礎歯学にあると学びました。
 以前私が顎運動の問題に対して最後に答えを得たのは,上條教授の解剖学の著書でした。長年固く閉ざされていた門を開いてくれたように感じました。思い返せば上條教授の最後の講義を聞いた学年が実は私たちの年代でした。マイクから出るかすれた声は今でも忘れられません。後輩たちにもこの上條教授の著書の素晴らしさをぜひ伝えたいと思いました。
 山根元教授の口腔内軟組織疾患への想い,これからの高齢者歯科を築いていく上田教授の想い,上條元教授・井出元教授から続く東京歯科大学の太い幹の解剖学への阿部教授の想い。名前が変わって受け継がれる歯学への想いを,学術を通じて表現してみました。担当した学術からの想いは歯科のデジタル化です。これらが少しでも皆様のお役に立てば幸いです。”

(昭和58年卒・鈴木 龍 記)