SCIENTIFIC REPORTS(2016年発表 IF5.228)掲載(東京歯科大学口腔健康科学講座スポーツ歯学研究室と群馬大学大学院理工学府分子科学部門との共同研究)(同窓会報第409号より)

群馬県若手ネットワーク担当 片野勝司(平成1年卒)

 以前,同窓会報でご報告しましたマウスガード素材であるEVAの劣化に関する研究をまとめた国際論文が,2017年3月15日にScientific Reportsオンライン版にて発表されました(論文リンク:https://www.nature.com/articles/srep44672)。Scientific ReportsはNature publishing groupの国際科学誌であり,自然科学と臨床科学のあらゆる領域を対象としているオープンアクセスの電子ジャーナルです。
 執筆者は群馬大学大学院理工学府の桒原涼子氏でタイトルは「Crystallization and hardening ofpoly(ethylene-co-vinyl acetate)mouthguards during routine use」です。ぜひご覧になってください。本論文は,マウスガード素材として世界中で最も汎用されているEVA の劣化についての世界基準を示した論文であり,今後は世界中で本論文を参考にその指導が行われる事が予想されます。この論文が最も評価されたのは,実際に使用したマウスガードについて分子レベルでの解析を行い,使用したマウスガードは結晶成分すなわち分子運動の束縛成分の増加が確認され,それがマウスガードの劣化の実態であること突き止め,そしてこれに影響する因子について科学的立証した点だそうです。現在,医科で推し進められている臨床と理工学の融合をいち早く歯科から発信できたと共に,2020東京オリ・パラを前に日本のスポーツ歯科と東京歯科大学のレベルの高さを世界に示せたと考えています。

 共同執筆者としては載る事は出来ませんでしたが,マウスガードの提供という形で,このような素晴らしい世界的な研究に関われた事を嬉しく,そして誇りに思い本誌面をお借りしてご報告させていただきました。(Acknowledgementsで片野・鎗田の名前を出していただきました。)
 最後に群馬県若手ネットワーク担当として,本学で培った探究心と熱い気持ちを持ち続け,そして人の繋がりを大切にしていれば,地方へ移ったり,開業医となっても,このような世界的な研究プロジェクトに関われる事を少しでも示す事が出来たのではないかと思います。

後述:Scientific Reports 論文の他にマウスガードの保管方法や交換時期について明らかにした原著論文がスポーツ歯学第20巻第2号に掲載されています。そして,2016年名古屋で開催された第27回日本スポーツ歯科医学会学術大会にて,「圧力に対する影響」についての発表が研究奨励賞を受賞しています。
参考:インパクトファクター(IF)とは?
 特定の期間に,ある特定雑誌に掲載された論文がどれくらい頻繁に引用されているかを示す尺度です。その分野におけるその学術雑誌の影響力を示す評価ツールです。例)2015年にIFが着いた歯科雑誌は89誌で,最も高いものはPeriodontology2000でIF4.949,次いで高かったのがJournal ofDental Research でIF4.602でした。
 ちなみに,国内の医科雑誌で2016年に最も高かったのが循環器学会のCirculation Journal でIF4.124しかありませんでした。本論文が掲載されたSCIENTIFICREPORTS のIF5.228が如何に高いかがご理解いただけると思います。