近畿地域支部連合会/第64回東京歯科大学近畿地域支部連合同窓会総会・学術講演会

 錦秋深まる11月23日(金・祝),小雨降る中,第64回東京歯科大学近畿地域支部連合同窓会総会・学術講演会が,京都市東山区三条蹴上のウエスティン都ホテルにて行われた。

 午後1時より京都府支部河野の司会で総会を開始,校歌斉唱,物故者への黙祷の後,永田賢司京都府支部長の挨拶に続いて,来賓としてお招きした井出吉信学長より,大学の現状について説明があり,水道橋への移転事業の進捗状況や学内の状況についての詳しい報告がなされ,なかでも,近年他大学において行われている授業料の値下げ競争が,入学してくる学生の学力等に与える影響が大きくなりつつあることや,ひいては受験生の質にも影響が出始めていることなどを,様々な資料を提示しながらご説明された。このような状況下,父兄をも巻き込んだ教育ならびに研究の推進が重要であることを強調され,その成果として,国家試験の合格率上位を維持できているとされた。

 また,矢﨑秀昭同窓会長,髙橋義一専務理事からは,同窓会の現状として若い会員の同窓会への関心が薄く,地域支部に入会せずそのまま音信不通になってしまう傾向があることが説明され,このままでは同窓会が立ちいかなくなることが危惧されることから,若手の声を同窓会運営に反映させるための数々の試みを行っていることの報告があった。

 これに対して会員からは,国家試験の合格率は高いが,教育や研究レベルの維持ができているのかといったことや,研究成果を診療報酬に反映させられないのかといったことが質問された。これに対して,井出学長から水道橋への移転は,他大学との人的,学術的な交流をも促す目的があることが披露され,単科大学では規模が限られる教育・研究費をこのような事業で補っていき,成果を上げたいということが説明された。また,現在の高齢化社会を反映して歯科界は,摂食嚥下などの分野に守備範囲が広がりつつあり,この分野での教育・研究を臨床に反映させるべく力を入れていることが説明された。そして,西村眞治副支部長の総会閉会のあいさつで総会は無事終了した。

 つづいて,オーラルメディシン・口腔外科学講座の片倉朗教授をお招きして,“歯科医師の目で口腔癌の早期発見を―先生方の診療室が早期発見の最前線です―”というテーマで学術講演会が開催された。片倉先生は市川総合病院に勤務されているということで,まずは市川総合病院の歴史から話が始まり,古い写真も織り交ぜられ,年配の先生方からは歓声が上がった。そして,オーラルメディシンのスタンスとして検査の評価をしていくことを挙げられ,それには隣接医学の知識が不可欠との観点から先程の市川総合病院設立の経緯とリンクさせた話をいただいた。各論としては,日本の口腔癌の発症率は年々上昇してきており,これは先進国においては日本のみという不名誉な状況であり,ことに若い女性の口腔癌が増えているという,我々が座学で習ったこととは全く違う傾向を呈しつつあることが示された。口腔内の見方としては,自分なりの方法で口腔内全体を見渡す基準を身につけることが大事とされ,普段見慣れている患者さんの口腔内とちょっと状況が違うなと思った際には,迷わず検査を受けさせることが病変の早期発見につながることを強調された。ことに赤色病変と,白色病変は危険度が高く,口腔内の紅白はあまりめでたくないとのことである。そして会場に到着する前に東福寺を拝観されたとのことで,そこで御自身で撮影された色とりどりの落ち葉を例えに出して,境界不明瞭な非均一型の病変は特に注意すべきことを強調された。最後に,唾液による癌の診断の実用化に向けて研究されていることを披露され,講演を締めくくられた。

 その後,宴席に移ったが,今回は趣向を変えて,宴席の前に笑福亭円笑さんをお招きして落語を一席お話しいただき,場を和ませたところで,宴に移った。

 永田支部長のあいさつに続いて,荒木賢先生による乾杯の後に,皆それぞれが美酒に酔いしれながら旧交を深め合った。最後に丸山康子副支部長の挨拶を以って無事お開きとなった。

 1年中で最も京都が混雑する時期と重なり,来訪された方々は市内の移動に気を使われたと思うが,非常に有意義な1日であった。

(京都府支部・河野 多聞 記)