巻頭言/若手同窓との連携

専務理事 髙橋義一
専務理事
髙橋義一

(東京歯科大学同窓会会報 平成24年12月号/第389号より)

 「賛成の方は挙手ねがいます。」緊張した空気の中,議長の声が議場に広がる。タイミングを合わせたように一斉に評議員の手があげる。「挙手多数,よって第8号議案は可決確定しました」の言葉で空気は一瞬に和らぐ。平成24年度評議員会において,準会員制度が承認された。「準」がつくが,これにより母校に入学した時から在学時,そして卒業後の人生に至るまで,東京歯科大学同窓会として同じステージの上でかかわりを持てるようになる。従来開業し地域医療の地を定めてから同窓会活動に参加する傾向が強かったが,若手同窓との連携を強めようとする今回の施策は,将来にむかって歯科界を担う若い世代への支援そして人財育成を強く意識するものである。未来への人材育成,これこそ大学そして同窓会にとっての大切な使命であり,大学との強い連携をもちながら,この課題を積極的に取り組む必要がある。準会員制度の導入によりすごく懐が広がった東京歯科ファミリーとして,ますます母校との精神的一体化を深めながら,脈々と伝わる血脇先生からの家族主義を心に,大切にこの制度を育ててゆきたい。

 この準会員制度,卒業後5年間の新進会員制度,そして卒後6年以降の若手同窓も含めた“若手同窓との連携推進”は,若手離れによる将来への不安を解消できるのではと生まれてきた経緯もある。「同窓会報の封を切らない」,「会費を払わない」,「支部に入らない」,「同窓会って?」,との若手同窓気質を説明する切ないフレーズをいろいろな場面で耳にする。まさかと思い若い人に直接きいてみても同じような空気で,むしろ“同窓会に対する関心のなさ”は我々の想像をはるかに超えている。

 「会に入るのは当たり前」感覚をもった我々世代は,考えてみれば元来農耕民族で集団意識が強く,組織を大切にするうえ,江戸時代,明治,大正,昭和と御上のお告げに従順に“和・つながり”を美化してきた時代の登場人物なのかもしれない。それが戦後大きく変わった。バブル,小家族化,情報化,そして右肩下がりの社会経済的状況の到来。町を歩いて若者を見ると,昔は誰でも同じにみえた人たちが,一人ひとり個性をもった姿でパーソナリティをにじませながら歩いている。まさに,“集団・組織”から“個人・パーソナリティ”の時代に舞台は変わってきたようである。組織参加についても,“当たり前”から,“説明と同意”という言葉が当てはめられるように,時代が変わったのだと考えると納得できる。

 そんな心で若い同窓の話を聞いていると気持ちが良い。知性と教養もかなり高いし,将来への夢を語る姿には熱さを感じ,未来への無限の可能性にうらやましく思ったりする。若い人たちが同窓会組織の中でクローズアップされた今,東京歯科の歴史と文化や伝統,同窓会の意義を我々が行動で示し,それを若い先生方なりに感じ,新しい同窓会の姿として伝えてもらえるようにと願いたい。