巻頭言/国民皆保険を崩す禁じ手 −窓口3割負担+定額負担−

島村 大 渉外部常任理事
渉外部常任理事
島村 大

(東京歯科大学同窓会会報 平成23年8月号/第382号より)

 厚労省は,社会保障と税に関する集中検討会議に外来患者の窓口負担に一定額を上乗せする定額負担を導入し,難病患者の自己負担軽減の財源にあてると提示した。この3割窓口負担プラス定額負担は,2002年の3割負担導入時の国会で,窓口負担は3割が限界とした厚労省の見解,立場を反故にするとともに,厚労省の理由のひとつの「長瀬指数」により3割窓口負担を超えると医療需要の5割を満たさない,つまり病人の半分も受診できなくなるとの政策判断を投げ捨てるものである。大震災の混乱に乗じ,国民皆保険制度の根幹を崩し,社会保障の機能弱体化をはかることに対しては如何なものかと思う。

 窓口3割負担は,2002年の医療改革で導入されたが,国会審議で厚労省よりこの窓口負担水準が限界と触れられ,法案成立後,当時の官房審議官は「患者負担引き上げのカードは全て使い切った」と講演で解説している。事実,健保法の附則に「将来にわたって患者負担は3割を限度とする」とあり国民と約束した。